広島市学校教育努力目標(1951年4月)

広島市学校教育努力目標

 広島市教育委員会 1951年4月

  平和都市広島市建設の基盤に培うため本年度は特に次の努力目標を設定し、これが実現達成を期したい。

 

一、道徳教育の振興

  道義の昂揚は、国家再建の根基であることにかんがみ、あらゆる機会と活動を通じて、民主的社会人としての道徳的叡知と、道徳的感情を養うとともに、日常生活におけるその実践を徹底せしめ、もってうるわしい郷土を建設し、文化創造に貢献する善良な国民を育成したい。

 一、保健教育の徹底

  体位の向上は、国家発展の基盤であることにかんがみ、学校・家庭および社会にわたり、健康生活の習慣を身につけるとともに、その改善に協力する態度を養い、さらに安全生活の実践に努め、もってあかるい郷土を建設し、民族繁栄に奉仕する心身ともに健全な国民を育成したい。

 一、生産教育の推進

  生産の拡充は、国力伸長の根源であることにかんがみ、勤労と職業に対する正しい信念を確立し、経済生活の理解と能力を養うとともに基礎的生産技術を習得させ、もってゆたかな郷土を建設し、経済自立に協力する有為な国民を育成したい。

============================

出典:「平和への教育-広島の初等教育」(広島市小学校長会編、1956年5月29日)

 「広島市学校教育努力目標」は、広島平和記念都市建設の基盤は「教育」にあるとの根本理念に立ち、「平和への教育」に究極の目標を求めたものである。しかし「平和」ということは、人類の歴史を通じ幾たびも願われたにもかかわらず、すべてはあえなく崩れ去っている。いま広島市民は、その平和への悲願を同じ意味においてくり返したのではない。原爆という未曾有の苛烈悲惨な試練を体験した最初の人類である広島市民として、かってのいかなる平和論者とも異なるより高い純粋な立場において、新しい世界史の門出に立ち、「平和への教育」を追求せんとしたのである。否それを天与の使命としたのである。

 「平和への教育」を支える柱として、「道徳教育」「保健教育」「生産教育」の三つが立てられ、これを学習指導、生活指導、教育調査、教育評価、現職教育等の全分野にわたって具体的におし進めんとしたのである。