内 閣 総 理 大 臣 挨 拶
広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式に当たり、原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます。今なお被爆の後遺症に苦しまれている方々に、心からお見舞いを申し上げます。
六十三年前、幾万の尊い命と共に焦土と化した広島は、今や我が国有数の大都市に発展するとともに、国際的にも平和都市として名誉ある地位を占めています。私は、これもひとえに市民の皆様方が、廃墟の中から立ち上がり、街を復興するにとどまらず、被爆地として、平和の尊さを世界中に訴える努力を続けてこられた賜と考えます。
国としても、唯一の被爆国として、広島、長崎の悲劇を二度と繰り返してはならないと堅く決意し、戦後一貫して国際平和の途を歩んでまいりました。
広島は平和の象徴(シンボル)です。昨年から日本とアジアの青年たちが「広島平和構築人材育成センター」に集い、平和の大切さを実感しながら国際平和協力活動について学ぶ研修を始めています。
平和で安定した国際社会は、我が国の安全と繁栄にとってもかけがえのない財産であり、これを守り育てるためにも、我が国は「平和協力国家」として、国際社会において責任ある役割を果たしていかなくてはなりません。先の北海道洞爺湖サミットのG8首脳宣言では、初めて、現在進行中の核兵器削減を歓迎し、すべての核兵器国に透明な形での核兵器削減を求めました。
そして、本日、ここ広島の地で、改めて我が国が、今後も非核三原則を堅持し、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、国際社会の先頭に立っていくことをお誓い申し上げます。
また、被爆により苦しんでおられる方々には、保健、医療並びに福祉にわたる総合的な援護策を実施してまいります。本年三月には、原爆症認定の新たな方針を策定し、できる限り多くの方を認定するよう努めています。さらに、六月には、在外被爆者の方々の被爆者健康手帳の取得を容易にするための改正被爆者援護法が成立しました。今後とも、苦しんでおられる方を一人でも多く援護できるよう取り組んでまいります。
結びに当たりまして、犠牲となられた方々の御冥福と、被爆された方々並びに御遺族の皆様の今後の御多幸、そして広島市の一層の発展を心より祈念申し上げ、私のあいさつといたします。
平成20年8月6日
内閣総理大臣 福田康夫