広島市平和記念式典(1953年)における内閣総理大臣のメッセージ

内閣総理大臣のメッセージ
1953(昭和28).8.6
メッセージ

本日ここに,広島市原爆死没者慰霊式並びに平和記念式を厳修されるに当り,謹んで諸霊の冥福を祈ると共に,平和都市建設の理想を実現されつつある,広島市市民諸君の御努力に対し,深甚の敬意を表すものであります。

世界の平和を目指して,民主主義に基く文化国家を建設することは,わが国憲法の理想とするところであり,われわれ国民の進むべき目標であります。新しい広島市の建設も,この意味においてわが国の理想を世界に闡明せんとするものであり,広島市の成長は平和的文化的の日本国家の成長を表徴するものであります。身を以て尊い平和の礎となられた地下の諸霊も民主日本の成長発展をのぞみ見らるるものと信してうたがいません。

この式典にあたり,私は謹んで原爆死没者各位の冥福を祈り,またその遺家族諸子の労苦に対し深く同情の意を表し,再びかかる大いなる不幸の繰り返されることのないよう祈念するものであります。

昭和二十八年八月六日

内閣総理大臣 吉田茂

〔広島市役所蔵〕