歌集あしあと 「詠草」三百号記念

『歌集あしあと 「詠草」三百号記念』(松田弘江編、呉短歌グループ、199104)

内容

作者
001 東芳枝 病窓の陽溜り
008 石垣つる 虔ましく
015 宇吹やす 消えざる思慕
拭い得ぬ面影哀シ似通える亡息〈こ〉の髪型にふと振り返る
022 大沢スミヱ 夫逝きて
029 大下二三子 独りの贅
035 爆死せる遺骨川底に埋もれいる川面に若きらのボート華やぐ
 036 小川美和子  終の美
043 沖盛玲子 凛と咲く花
048  戦艦大和と戦争歌碑の並び建つ丘の上より見おろすドック
050 小田晃子 花影
052  ひたぶるに肉親求むる「中国孤児〈こじ〉」愛しも吾が生し日を重ねつつ
057 片平喜美子 花の自在
060  過ぎ来し修羅一瞬憶いいつ広島に集いし吟会の華やぎの中
064 鍵田圭子 舅の終焉
071 木村ハツミ 追憶
078 古角明子 冷たき炎
084  機上よりパールハーバーみえはじむ歴史秘むるか湾は静もる
085 河野品江 追想
092 小林亙 渦巻く指紋
099 小島照子 春の雨
105 焼けだたれ遺品となりたる従妹の制服〈ふく〉は平和を叫び資料館に今
106 須田謙三 旅情
113  積山ふみ  たらりねの母
 千羽づる高くささげて子らの歌う「折りづる」のうた声は青空に消ゆ
 120  土手六女 松風の音
 127  藤堂美智子  句読点
 131   七月二日呉空襲の夜は明けて見知らぬごとき家路たどりしか
 131   被爆時の自が映像を叩くがに指さす女の吊しケロイド
134  能田登美子  敦煌の空
 134   引揚げて四十年経たり思い出のこもごも溢れる天津駅頭
 136   「今日から軍と行動す」と便りありしままフィリッピンから帰らぬ夫を今も待つ姉
 141  藤岡艶子  抱かれゆく埴輪
148 細川泰子 繊き韻
155 溝口ヨシヱ 逝きやまぬ川
162 山沢さつき つつましき幸
167  毒ガスの疵を嘗めつつ未だ病める人らの疼みを資料館に見つ
168  反戦の歌碑立つ丘より見下せる港に灯ともす自衛艦並ぶ
169 山田すなえ 灯明り
170  孤児たりし苦渋は告げず取り縋る中国服に熱き母の眸〈ひとみ〉
176 脇本光子 焦がるる君のコール待つ
183 宇吹やす あとがき
185 松田弘江 編み終えて