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元広島文理科大学(旧広島大学理学部1号館)の保存を考える会

元広島文理科大学(旧広島大学理学部1号館)の保存を考える会設立:1995年1月7日

構成:

会長 川村智治郎(元広島大学長)
副会長 竹山晴夫(元広島大学長)、沖原豊(元広島大学長)、三好稔(元広島大学長代行)、
後藤陽一(広島大学名誉教授・原爆遺跡保存運動懇談会座長)、
渡辺則文(広島大学名誉教授・芸備地方史研究会会長)、
向山宏(広島大学文学部教授・広島史学研究会理事長)
幹事 頼棋一(広島大学文学部教授・広島史学研究会理事)、
小原誠、石丸紀興、宇吹暁、河瀬正利
事務担当 長谷川博史

 

理学部1号館をめぐる動向

事項
1989 05 14? 広島大、広島文理科大時代の被爆時計・タイル・鉄製扉を東広島市の新キャンパスに移し保存することを決定。(理学部1号館)
07 25 「被爆建造物を考える会」主催原爆遺跡をめぐるフィールドワーク、広島市で実施(約60人参加)。広島赤十字・原爆病院・広大理学部1号館などを見学。
08 04 旧広島文理科大学の焼けずに残った一研究室に、被爆当時の経緯を記した説明版設置。(理学部1号館)
1990 09 21 広島市の「被爆建物等継承方策検討委員会」、市内7ヶ所の被爆建物(広大理学部1号館・広島赤十字・原爆病院等)を視察。
1991 01 31? 広島大理学部の尾崎卓美技官、被爆建造物である同大理学部1号館の百分の一のガラス模型を製作。
07 24 広島大学理学部の移転作業開始。同学部の建物は被爆遺跡で、保存を要請する声も。(8月1日、第1陣の引越し荷物を西条キャンパスに搬出。)(理学部1号館)
09 26 原爆遺跡保存運動懇談会(座長・後藤陽一広大名誉教授)、被爆した広大理学部1号館の保存を田中隆荘学長に請願。平岡広島市長にも保存への協力を要請。
11 20 広島大学理学部1号館保存のアンケートを大学関係者OB(126名)に発送。回答102名の9割が保存要求。
12 19 後藤陽一(原爆遺跡保存運動懇談会座長)ら有志、広島大学理学部1号館(被爆建物)保存についてOBを対象に実施したアンケート調査の結果を田中広島大学長に手渡す。それによると「保存を求める」は9割。
1992 02 04 広島市被爆建物等継承方策検討委員会が視察した被爆建物=広島市役所、広島大学理学部1号館、広島赤十字・原爆病院、広電変電所、旧陸軍被服支廠、広島銀行銀山支店、旧陸軍司令部通信室、本川小学校、レストハウス(予定)。
02 13? 川本智治郎らの呼びかけで実施した広島大学理学部の保存をに関するアンケート結果が判明。OBらの6割が、旧理学部1号館の保存を求める。
04 21 広島市、被爆建物等継承方策検討委員会の6回目の会合を開催。広島逓信病院、文理科大学、広島高等学校、日銀、兵器支廠、兵器学校、などの継承方策について検討。(理学部1号館)
07 12 広島県美術会議・原爆遺跡保存運動懇談会、広島赤十字・原爆病院や広島大学理学部1号館などの写生大会を開催。
1993 02 18 原田康夫広島大学医学部長、第9代学長に選出された記者会見で、旧理学部1号館保存や放射線医学などを中心とした国際貢献などの抱負を語る。
1994 06 20 林紀子参議院議員、参院文教委員会で、原爆ドームを世界遺産条約のリストに登録することや広島大学の旧理学部1号館の保存を求める。
07 19 原爆遺跡保存運動懇談会のメンバー6人、広島大学理学部1号館の保存を県と市に要請。
12 16 芸備地方史研究会、旧広島大学理学部1号館を全面保存し活用するよう、平岡広島市長と藤田知事に文書を要望。
12 27 広島大学本部の跡地利用計画策定調査検討委員会、3回目の会合を開催。広島市が多様な文化拠点とするとの理念を示し、整備の前提条件として「旧理学部1号館の保存・活用策の検討など9項目を示す。
1995 01 07 広島大学学長経験者3人など13人、「元広島文理科大学(旧広島大学理学部1号館)の保存を考える会」の初会合を広島市内で開催。
01 19 元広島文理科大学(広島大学旧理学部1号館)の保存を考える会、広島市と県に対し、同建物の保存と活用を陳情。
03 17 広島大学本部跡地利用計画策定調査検討委員会、7回目の会合を広島市内で開催。最終報告案に被爆建物である理学部1号館の利用の可能性を検討することを追加。
1996 01 27 原爆遺跡保存懇談会・芸備地方史研究会、シンポジウム「あらためて原爆遺跡の保存を考える-レストハウス、元文理大などをめぐって」を広島市内で開催。山瀬明・石丸紀興・長谷川博史が報告。約130人が参加。(理学部1号館)
03 01 広島市、広島大学本部跡地の校舎の解体工事を開始。同市、旧理学部1号館以外の被爆建物13件の記録保存のため写真を撮影。
11 05? 「元広島文理大学の保存を考える会」と芸備地方史研究会、旧広島大学理学部1号館の保存・活用を求める署名運動を開始。
12 10 沖原豊ら「元広島文理科大学の保存を考える会」と「芸備地方史研究会」の代表6人、広島県議会に被爆建物「旧理学部1号館」の保存・活用を求める陳情書を広島市と市議会に提出。
1997 03 20 「元広島文理科大の保存を考える会」・「原爆遺跡保存運動懇談会」など、元文理大理学部1号館の保存を考えるパネル討論「原爆遺跡-過去から未来へ」を広島市内で開催。約2O0人が参加。
1998 05 21 「元広島文理科大学の保存を考える会」と「芸備地方史研究会」、被爆建物の旧理学部1号館の保存を求める陳情書を広島市議会に提出。
1998 08 11? 広島県教育委員会、幕末から第2次世界大戦終結までの建造物を対象にした「近代化遺産」の総合調査の結果をまとめる。広島大学旧理学部1号館や広島市レストハウスなどの被爆遺跡を含む約1000件。

 

平和と民主主義を守る広島県協議会資料一覧

平和と民主主義を守る広島県協議会 結成日:1958年12月19日

資料一覧

年月日 資料名 発⇒宛 備考
1958
1031 「平和と民主主義を守る広島県協議会」結成についての要請 平和と民主主義を守る広島県協議会結成準備会⇒
1219 平和と民主主義を守る広島県協議会結成について 広島県労働組合会議⇒
 1959
 0107  反戦反失国民大行進のための第1回広島平民協開催について  平岡弘人(平和と民主主義を守る広島県協議会代表者)⇒
 0114  戦争と失業に反対する国民大行進のための第2回広島平民協会議報告   平岡弘人(平和と民主主義を守る広島県協議会代表)⇒
 0211  第2回広島平民協例会報告  長田新(平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒
 0217  安保条約改定阻止と日中国交回復のための大講演会開催について  長田新(平和と民主主義を守る広島県協議会会長)・平岡弘人(広島県労働組合会議議長)⇒
0310 民主教育に対する不当弾圧真相報告会〈参加呼びかけ〉 平和と民主主義を守る広島県協議⇒
0312 第4回平民協開催について 長田新(平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒
0325  平民協第4回例会報告  長田新(平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒
 0327  安保改定阻止討論集会開催について   長田新(広島県労働組合会議 平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒
 0413  第5回平民協例会報告  長田新(広島県労働組合会議内平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒
0608  平民協第5回例会開催について  長田新(広島県労働組合会議内平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒
 0619   平民協第6回例会開催について  長田新(広島県労働組合会議  平和と民主主義を守る広島県協議会会長)⇒

原水爆被災白書についての佐藤総理大臣への要望書(談和会)19650805

原水爆被災白書についての佐藤総理大臣への要望書(談和会)19650805

原爆被災二十周年を迎えるにあたり、私たちは日本政府が被災の実態調査を行ない、全死没者の氏名を明らかにして慰霊碑の過去帳に納めるとともに、生存者についてはその健康と生活の全貌を客観的に明らかにすることを要望いたします。そのことは、犠牲者の霊をなぐさめ、被爆者を力づけるとともに、学術研究の上に多大の貢献をなし得るものと信じます。佐藤総理大臣が英断をもってこれを国家的事業としてとりあげ、完璧な研究体制をつくって、世界の文明に貢献し得る被災白書を完成されるよう、希望してやみません。
昭和四十年八月五日

出典:今堀誠二「原水爆被災白書運動のその後」(『世界』1965年12月号)

原爆被爆者調査に関する研究会 1965年

原爆被爆者調査に関する研究会 1965(昭和40)年2月11日

出席案内状
原爆被爆者調査に関する研究会について
このたび厚生省は、被爆者の調査を実施することになりました。被爆者調査の必要性については、さきに本会でも要請決議をおこなったところであり、この調査を成功させるための「地の塩」になりたいと思います。
ついては、当地における被爆者問題の各方面の権威にお集まりいただき、調査についての御高見をおうかがいしたいと存じます。
ご多忙中を大変恐縮ですが、まげて御出席いただきたく、お願い申しあげます。

一、日時 二月十一日(木) 午后五時~六時半
一、場所 広島大学 大学会館 第三集会室 (広大正門南、電車通ぞい)

談和会 幹事 石井金一郎 今堀誠二

なお、ご参考のため、厚生省調査原案を同封致しました。
(恐縮ですが少いので、当日、御持参願います。)

本研究会には、左の方々に御案内をさしあげました。(敬称略 アイウエオ順)

伊藤満、金井利博、熊沢俊彦、佐久間澄、重藤文夫、志水清、庄野直美、田渕昭、百々次夫、中野清一、原田東岷、松坂義正、三村剛昴、山手茂、渡辺漸、和田精護

原爆記念文庫所蔵原爆関係文献目録

『原爆記念文庫所蔵 原爆関係文献目録 昭和40年8月31日調』(原爆資料保存会、19651015)

 bk651015
 広島 長崎の体験を永久に伝える為に
人類の過ちを繰返へささぬ為に
ひたむきな平和への願いをこめて
尊い原爆記念文庫が広島に生まれました
みんな血と涙と訴へで綴られた記録です
この文庫の保存と成長へ御協力を
(原爆記念文庫標語)
 はしがき
1.原爆が投下されてからもう20年を経過した。本会は広島長崎の体験を永久に後世へ伝える為,昭和23年頃から苦難な道を歩みながら,文献の蒐集に力を注いで来た。これ等はみんな被爆当時の惨状そのままの記録や,学者の研究調査されたもので,世界平和推進の為極めて貴重なものである。
2.昭和40年8月31日迄に集めたものが2,000冊になつたが,まだまだ不足のものが多々ある。これは将来を期して完備したい。尚文献中には専門的のものも数多くあるが大半は大衆的のものである。これは大衆と共に考へ大衆と共に歩みたい文庫の使命に依るものである。
3.原爆の被害が余りも広大である為,学問的研究分野も多様であり,被害の処理も多方面に亘って居るので,全文献を整理分類することは困難である。依って本目録分類は正規の図書分類法に依らず,わかりやすい別記の10分類に整理して見た。御批正を乞う。
4.原爆20周年に当り,各方面の報道陣を始め,著書や雑誌に依って広島をアッピールされた事は感謝に堪えない,特に被爆者調査や,広大に原爆研究機関が設備される等,国家が直接広島と取組むことになった事は,おそまきながら嬉しい事である。
5.文庫開設(昭和40年6月6日)以来,A.B.C.C.や広島医師会を始め全国各地から個人で文献を寄贈されたものが160冊もある。寄贈者各位に対しここに深甚の感謝を致します。
昭和40年9月15日

日本国政府に対する要請(談和会 19641003)

日本国政府に対する要請
1964年10月3日

日本国政府に対する要請
談和会
私たちは日本国政府が、原水爆被害者の救援を効果的に行うとともに、日本国民および全世界に、原水爆戦争の恐ろしさを客観的に伝えることによって、核兵器をこの地上から永久に葬り去るため、さしあたり左の三点につき、積極的にとりくまれることを、要請いたします。

一、原水爆被災者の国勢調査
一九六五年は国勢調査の年に当りますが、その付帯調査として、一九四五年に広島・長崎で、一九五四年にビキニで、被害をうけた人々の、人口調査を行うことを要望いたします。この種の国勢調査は、一九五○年にABCCの要請で実施した先例があり、中間調査としては一九五八年に一部実施されていますが、被爆者援護の推進など、重要問題が山積している現在、全国的規模で完全な調査を行う必要性は、ますます増大いたしております。被災後、二十年たった今日こそ、こうした調査を客観的に実施できる、唯一かつ最後の機会だと思います。調査にあたっては、被災当時に遡って、被爆地に居住し、又はその直後に被爆地に入ったすべての人口、一九四五年九月以後、後遺症によって死亡した者、ならびに被爆者の児孫など、被害の全貌を明らかにすることが、大切であると思います。

なお、広島・長崎の被災者の中には、沖繩県民をはじめ、アメリカ・ロシア・中国・朝鮮・東南アジア各国人、ビキニの場合はマーシャル群島の原住民と外人宣教師が、相当数含まれていますので、琉球民政府および関係各国の協力を得て、国際的な規模での調査がなされるよう、希望いたします。

二、被災白書の作製
終戦以来、総理府はじめ各官庁は、種々の白書を公表していますが、原水爆被災に関する白書は、一度も発表されていません。原水爆被害者については、当時の惨害はいうまでもなく、原子力で破壊せれた健康が、遺伝の問題をも含めて、どのように深刻な問題をはらんでいるかを、明らかにせねばなりません。さらに、被災によって生じた社会的条件を調査研究することも、被害者援護の問題点を明らかにする上において、大切なことだと思います。これには現代科学の精髄をつくした、綜合的な学術調査が要求されます。被災白書の作製は、今日の人類が、子子孫孫のために残さねばならない、人間としての義務であります。このことは、被爆者援護を決議した、国会両院の要請に答える道でもあると思います。

三、国連が原水爆被害調査報告書を作製するよう、国連総会に提案すること
原爆症を中心とする原水爆被害の科学的究明については、すでに多くの業績が発表されていますが、その間に見解の相違があり、調整を必要とする段階に来ています。また、その治療および社会医学に関する部門においては、研究にかなりの立ちおくれがあり、この方面の研究を推進することは、被害者の痛切な願いであります。国連がこうした点で調整および補充を行ない、原水爆被害の科学的研究を完成・発表するならば、単に被爆者の救援に役立つばかりでなく、核戦争のおそろしさを、全世界に伝える意味でも、重要な役割をはたすことと信じます。ウ・タント国連事務総長も、日本国政府から、こうした提案がなされるならば、全面的に協力したいという意見をのべられていますし、セラー国連原子放射能科学委員会事務局長も、この主旨に賛意を表されています。日本国政府が十一月の国連総会に、右の提案をなされるよう、要望してやみません。

以上の三点は、日本国民全体の願いを具体化したものであり、また世界全人類の願いでもあると思います。原爆被災二十周年を迎えんとするに当り、日本国政府が、全国民の支持と協力のもとに、自主・民主・公開の三原則にもとづいて、右の三事業の達成に努力されるならば、被災者の救援および核戦争の禁止のため、多大なる寄与をあたえられるぱかりでなく、「後世への最大のおくりもの」となると信じ、敢て要請するゆえんであります。

一九六四年十月三日

日本国民に訴える
私たち、広島・山口の大学人有志の研究団体「談和会」は、本月、日本国政府に対し、原水爆被害についての実態調査を行い、これを被災白書にまとめるよう、要請いたしました。その内容は、来年の国勢調査にあたり、付帯調査として原水爆被害者の調査を行なうこと、日本政府が責任ある被災白書を作ること、今秋の国連総会に際し、日本政府から、国連が完全な被爆調査報告書を作成するよう、提案することの三件であります。こうした要請は、全国民の強力な支持なしには、到底実現することができません。私たちは日本の各界各層の人々が、政府に対して右の三提案をとりあげるように、申し入れていただきたいと思い、敢てこの訴えを公にする次第であります。

「戦後は終った」という人もいます。たしかに原水爆被害者などを除けば、戦争の爪あとは、ある程度回復いたしました。また核戦争の危険性が強いという一点をのぞけば、泰平ムードは天下にみちあふれています。しかし、現代にとって大切なことは、いまだに解決し得ない、被爆の惨禍であり、新しい核戦争の危険性であります。普通の戦災とちがって、放射能禍におかされたものには、何の救いもないのです。人類が四六時中、核戦争がいつ始まるか分らない、恐怖にさらされている様では、戦後どころか、戦争そのものがまだ終っていないといわねばなりません。

敗戦の直後、日本政府の協力のもとに、学術研究会議の支援をうけた日本の科学者数千人は、総力をあげて原爆被害の総合調査にとりかかりました。しかし、この研究に対して、一九四五年十一月三十日に、占領軍がら禁止命令が出され、すべては水泡に帰してしまいました。その後、今日に至る迄、政府機関の手による調査は行なわれていません。被爆当時、亡くなった人の数さえ、正確に分っていないのです。

一九四九年以後、戦争は終っていたにもかかわらず、被爆者の中には、原爆症にかかっていることさえ知らされず、まして適切な治療も与えられないまま、空しく死んでいった人が、幾万人にのぼりました。原爆症という言葉が普及し、その救援活動が始まったのは、一九五八年以後のことです。今でも被爆の実体が正確にわかっていないために、救援活動は有効に組織されておりません。原水爆被害の完全な調査を行なうことによって、本当の対策が立てられるのでなければ、被災者は救われようがないわけです。

核兵器の全面禁止は、全人類の願いであると思います。しかし、実際には大小の核兵器およびその運搬手段の開発は日ごとに進み、核実験による死の灰の降下は、人類の生存に深刻な影響を与えるほどになっています。こうした矛盾が生ずるのは、原水爆戦争の本当の恐ろしさが、知らされていない結果、核戦争に反対する声が、全人類のものとなっていないためです。今こそ私たちは、被爆の全貌を明らかにすることによって、核兵器禁止の声を、すべての人の、心からの願いとし、また人類全体の大合唱としなければならないと思います。

一九六五年は原爆被災二十周年にあたります。石の上にも十年と中申しますが、日本の原水禁運動も二十年の風雪に耐えて来ました。今こそ大きく飛躍して、文字通り全国民を包む運動を展開し、被爆者救援と原水爆禁止の大目的を達成せねばなりません。その口火をきる意味で、私達は右の三つの提案を公表した次第です。

私たちは日本国民ががっちりとスクラムを組んで、右の三つの提案を実現するように、日本国政府に働きかけることを、希望いたします。原水禁団体・被爆者諸団体などが、こうした問題について、積極的な討論を起して下さることを、期待いたしております。婦人団体・青年団体・社会福祉団体など、多年この方面で努力を重ねてこられた諸団体が、さらに元気をふるい起して、国民運動の担い手となって下さるよう、頼みにいたしております。衆参両院をはじめ、県議会・市町村議会などは、選良としての叡智を発揮し、日本政府への要請を決議されるよう切望いたします。新聞・放送・言論界は、正しい輿論を育てるためのキャンペーンに、とりかかって下さるよう、特にお願い申し上げます。部落会・町内会およびすべての民主団体・社会教育団体・文化団体も、積極的に協力いただければ幸です。科学者・芸術家・宗教家・知識人とくに日本学術会議が、この運動の要の役割を引受けて下さるよう、仰望いたしております。原水爆被害者が先頭にたつことは、救援運動との結びつきからいっても、大いに意味があると思います。

私たちは運動の前途に横たわる困難を、知らないわけではありません。しかしビキニ被災の当時、だれがあの国民運動の大波が、起ることを予想したでしょうか。歴史の教訓は、正しい国民運動が、必ず勝利することを、証明しています。水の流れはどんなに小さいものでも、それが集まれば河となって、縦谷をうがち、横谷をきり開いて、千山万岳をつきぬけずにほおかないものです。

共通の目標に向って国民全体がいっしょに歩き出すことは、原水爆問題に関する限り、当然の命題です。日本国民は、世界から核兵器をとり除く使命をもっています。私たちのかかげた三目標は、政治上の利害や感情的な対立をのりこえて、皆が一致して要求し得るものと思います。

国際的には核兵器保有国のなかに、こうした運動を心よく思わない政治家がいます。彼らは自国民に対して、核兵器の恐ろしさを知らせたがらないからです。しかし、これらの諸国民も真実を知ることを希望していますし、私たちがその点でお役に立つことは国際的な友情の発露と申せます。世界の大部分を占める非核武装国が、日本の声を心から歓迎することは、申すまでもありません。国連の原水爆災害調査報告書は、全世界の輿論を、核兵器の全面的禁止に向ってもりあげるのに、大きな役割を果すことと思います。

私たちは何の力も持たない、弱い人間にすぎません。ただ無力な人間でも、みんなが団結して国民運動に立ち上るとき、世界の歴史を動かすことができます。一人一人の自覚が大切であり、勇気をもって当る行動が必要です。静かで力強い運動の中から、日本政府の方向が決定され、国連を通じて世界の動向を決定することができます。

伊藤満・志水清「対談 :原爆問題・今後どのようにとり組むか〈No.1〉」

伊藤満(広島大学政経学部長)・志水清(広島大学原爆放射能医学研究所長)「対談 :原爆問題・今後どのようにとり組むか〈No.1〉」(『政治経済セミナー』第822号、1968年2月1日)

発言者 内容 備考
08 本誌
08 志水 厚生省のスタンドプレー
10 志水 片寄った被爆者の分布状況
10 伊藤 資料の万博展示は必要!
10 志水 原爆フィルムの公開
11 志水 遅かった調査活動の出発
12 志水 早急に基礎的資料の整備を
12 志水 原爆被爆の特異性認識を
13 志水 被爆者には根強い政治不信
<以下次号>

 

 

「被爆者実態調査」に対する日本被団協の要望

『「被爆者実態調査」に対する日本被団協の要望』(森滝市郎(日本原水爆被害者団体協議会理事長)、1965年3月)

20220212203742063
調査対象:未登録被爆者、沖縄在住被爆者
全被爆者調査
ABCC調査資料
発病被爆者の医療上・生活上の環境
医療上の予防措置、生活上の保障
発病・体力低下・身体障害
就職・就労・結婚・進学
家族構成、母子家庭、孤老、孤児
就業、就労、収入、支出
根治療法研究状況
各地の健診、治療期間
被爆二世、被爆者の生殖機能
意思による健康状態調査
被爆直後から被爆者と接触した家族への影響
特別被爆者・一般被爆者区分の適否
調査の立案・実施・集約の各段階での被爆者・学識経験者の意見反映
20220212203742063
 要望事項
一、この調査対象に、未登録被爆者、沖縄在住被爆者が含まれるよう、あらゆる方法を適用して下さい。未登録を含め被爆者実数を把握して下さい。
一、健康・生活両面について、全被爆者の全数調査を行って下さい。健康調査については十分の一描出ということが伝えられていますが、この調査を完全なものにするためにも、またこの調査を機に個々の被爆者の精密な医学検査が行われるためにも、全数調査をして下さい。
一、今後の医学的研究のためにも、ABCCの調査資料等も活用し、原爆障害死亡者の数、死因等について、できる限り性格に把握して下さい。その遺族の生活実態を把握して下さい。
一、現に発病している被爆者が、安心して療養できるような医療上・生活上の環境におかれているか否かを調査して下さい。
一、被爆者が発病をくいとめ健康を維持して社会生活を営む上で、医療上の予防措置、生活上の保障は充分か否かを調査して下さい。
一、現に発病しているか、体力(=従って労働力)が低下しているか、あるいは身体障害を有するか、いずれかに該当する被爆者およびその家族の、経済生活、社会生活の実態を調査して下さい。
一、被爆ということが、就職、就労、結婚、進学等、被爆者の社会生活にどういう影響を与えているかを調査して下さい。
一、被爆ということが、家族構成にどういう影響を与えているかを調査して下さい。その中で母子家庭、孤老、孤児等の生活実態を把握して下さい。
一、被爆者の就業、就職、収入、支出の状況を調査して下さい。被爆者の就業、就職している生業について、その業種、業態、収入等の特徴を把握して下さい。
一、被爆者に特徴的な病気を調査して、それに対する根治療法研究の状況を把握して下さい。
一、被爆者の検診、治療について、各地の検診、治療機関は充実しているか、被爆者が利用し易いか、利用上の障害は何か、被爆者がどういう不満と要求をもっているかを把握して下さい。
一、医学上の問題として特に被爆者二世に対する原爆障害の遺伝的影響、被爆者の生殖機能等の問題について調査して下さい。
一、健康状態の調査については、自覚症状等のききとり調査にとどまらず、医師による検査を行って下さい。
一、医療法第二条第三号に定める被爆者について、例えば被爆直後から被爆者と接触した家族への影響の問題等を調査して下さい。
一、特別被爆者、一般彼爆者の現行法規による区分が適当か否かを調査して下さい。
一、この調査の立案・実施・集約の各段階を通じて、審議会の設置その他の方法により、被爆者及び学識経験者の意見が反映されるようにして下さい。