平和記念式典後の総理記者会見19960806

平和記念式典(広島市)における総理記者会見19960806

[質問] 最初の質問ですが、国が計画している平和祈念館の建設理念に、国の戦争責任を明確にした上で、核兵器廃絶に向けた国の決意をそこに明記する考えはありますでしょうか。

[橋本総理] 原爆死没者追悼平和祈念館について、国は原爆死没者全体に対する永続的な追悼を行う、そして、永遠の平和を祈念すると同時に、原爆に関する資料及び情報を幅広く収集、整理をし、後代に継承していく、これを目的として広島と長崎につくうとしているものです。
この設置に当たっては、昨年11月、厚生省に設置しましまた原爆死没者追悼平和祈念館開設準備検討会においてこの具体的な内容についての検討を行っていただいているところですが、本年の2月に公表されました「原爆死没者追悼平和祈念館基本設計に際して留意すべき事項について」という中で、祈念館の設置の理念については、日本国憲法の前文、被爆者援護法の前文及び第41条の精神とするとされております。
これから先、なお具体的な内容について検討会の中で御審議をいただきたいと考えているところです。

[質問] それでは次の質問に移ります。被爆者援護法について法の不備が指摘されていますが、今後、法改正の可能性はありますでしょうか。

[橋本総理] 平成6年に、被爆者援護法は制定された訳ですけれども、この法律は、被爆者の高齢化が進んでいること、そして、被爆者援護対策の充実・強化というものが喫緊の課題であることとともに、被爆後50年という節目の年を迎えることなどを考えて、国家補償という文言の取扱いを含めて政府与党内で精力的な調整を行いました。そして、国会で十分な御審議をいただいた上で成立をしたもので、今、見直すということを考えてはおりません。
この法律は、従来の原爆2法同様に、国内で被爆された方々を対象として立法されたものですから、国外の被爆者に対して、この法律を適用することは出来ない訳ですが、国籍要件を設けていないというところに一つの特色があります。言い換えれば、在外被爆者の方々でありましても、日本国内に滞在しておられれば、この法律は適用される訳です。また、国外に居住される被爆者の方々については、基本的には、その健康と福祉をあずかるそれぞれの国において対応していただくべきものだと思いますけれども、在韓国の被爆者の方々については、人道的な観点から、平成2年5月に、医療面で総額40億円程度の支援を行うことを日本側として意図表明をしてきました。そして、これを踏まえて、我が国政府から平成3年度及び平成4年度において合計約40億円、これを韓国赤十字社に対して拠出をしております。これが今実態として申し上げられることです。

[質問] 次ですが、被爆地と国では核兵器の違法性について異なった判断をしていますが、国際司法裁判所の判断に対する評価と、政府が海外で原爆展をしていく可能性があるかについてお尋ねします。

[橋本総理] 国際社会において、主要な司法機関ということになれば、国際司法裁判所、ICJということになる訳ですが、そのICJの判断については我々はこれを厳粛に受け止めておりますし、この勧告的な意見というものが核兵器の国際法上の評価に対して、今後いかなる影響を与えていくか、私どもとしては非常に注目をして見ているところです。
政府としては、このICJにおける口頭陳述で述べたとおり、核兵器の使用というものがその絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神には合致しないと考えてきました。いずれにしても、政府としては、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器、我が国だけが広島と長崎においてその被爆の体験を持つ訳ですけれども、こうした核兵器が将来二度と使用されるようなことがあってはならない、そして、核兵器のない世界というものに向けて我々は努力をしていかなければならない。核兵器のない世界を目指した、現実的かつ着実な核軍縮の努力を積み重ねていくことが重要だと考えています。
そして、今原爆展についてお触れになりましたけれども、7月26日に広島市と長崎市から広島・長崎原爆展を国の事業とする御要望が外務大臣あてに提出をされたと報告を受けました。政府としては唯一の被爆国として、原爆の悲惨さ、そしてこれを繰り返してはならない、人類はそれほど愚かではないはずだという強い願いを後世に伝えていくことは本当に重要なことだと思います。
その上に立って、実際に国の広報活動、海外広報活動としてこれを行おうとする場合には、相手国、すなわち受け入れ国との関係などありますし、その開催の対応、規模、様々な要素を総合的に勘案しながら、具体的な案件ごとに検討していかなければならない性格のものだと、そのように思っています。

[質問] 先日シーリングの方が決定いたしましたけれども、今後、財政再建にどう取り組んでいく考えか、また、景気の本格回復に向けて、補正予算を求める声が出ておりますけれども、財政再建と補正予算についてどういう認識で総理はおられるかということをお伺いしたいんですけれども。

[橋本総理]<略>

[質問] 与党内には、総理の衆議院解散・総選挙の時期について、年内という見方が広まりつつある一方で、年明けの通常国会冒頭など、巷間いろいろ推測されているんですけれども、総理の基準として国民に信を問うタイミングとしてはいつ頃を考えているかというのが1点です。
あと、予算編成と解散・総選挙の関係とか、あと、総理は通産大臣の頃から解散を打てるような景気状況にすることが非常に大切なんだという言い回しをしてきたと思うんですけれども、年内解散、現時点では解散を打てるような景気状況にあるというふうに見ていらっしゃるのか、その辺のことも含めてお願いします。

[橋本総理]<略>

[質問] 最後に質問させていただきます。今お話のありました沖縄問題なんですが、この解決に向けまして現在政府与党で進めております振興策の進捗状況は現在いかがなものかということと、更に、この問題について、総理補佐官を置くことについて、橋本総理のお考えを聞かせてください。

[橋本総理]<略>