詠草 平成期〈1989~〉

詠草 平成期<1989~><作業中>

No. 年月
1989   (平成元)
  274  02  宇吹やす1
月踏める靴と並びて華麗なり自動車(くるま)に退化の足飾る靴
下駄屋の子厭いし子等は巣立ちたり懐しみ訪うはきもの博物館
275 03   宇吹やす1
 永別の覚悟出来いしと想う裡みだれ戸惑う夫の異変に
276 04   宇吹やす1
 偶然に会いたる歌友と歩を合わすトンネル開通の記念ウオーク
277 05   宇吹やす1
 庭の草花ゆたかに活くるのみ足るリクルート疑獄のテレビきりたり
278 06   宇吹やす1
 底いなき政治不信を嘆かうや「虎」起ち上がりざま猛き咆哮
279 07   宇吹やす1
 脈絡もあらぬ孫との語らいを乱してジェット機天空をゆく
280 08   宇吹やす1
 健康の自負崩れゆくか血便の原因〈もと〉糺さんと医師の瞳優し
281 09   宇吹やす1
 無辜の民殺めしかつての兵に似る光るクモの巣払いたり
282 10   宇吹やす1
 一人娘を嫁がせし日の髣髴と逆流タイムに身を委ねいつ
283 11   宇吹やす1
 ひかり届かぬ深淵ふかく吸われゆく幻覚に怖ず「さる飛悲峡」
284 12   宇吹やす1
 安芸津湾に穏しく育つ「カキ」のごと師の薫陶に心沈めん
1990 (平成2)
285 01   宇吹やす1
 遊覧船をそびらに悠然「タコ」釣りの小舟揺れつつ点景となる
286 02   宇吹やす1
 我執さらばいかなる形かそれぞれの形にやさしく覆う積雪
287 03   宇吹やす1
 高松塚の復元に会いはやりたるルーツ中国への涯なき旅情
288 04   宇吹やす1
  良き姑めける言葉撰りおり散り敷ける軽き花びら掃き寄せながら
289 05   宇吹やす1
堂塔なべてを埋むる牡丹にみちびかれ長き階廊を喘ぐ長谷寺
290 06   宇吹やす1
 悠然とバス〈観光バス〉を阻める群長く視らるる秋吉サファリ―
291 07   宇吹やす1
 弥生ロマンにひかれ訪い来ぬ吉野ケ里発掘あらわに夏の陽はじく
292 08   宇吹やす1
 炎暑切る藤棚の下友集う乾杯ビールに揺るる木洩陽
293 09   宇吹やす1
 わらび座公演見終え星なき夜の道を冷えびえと踏む細き自が影
お知らせ 歌集「海熙し」西岡喜美子先生出版記念会 11月23日(勤労感謝の日)午前11時 広島八丁堀 グランドホテル
294 10   宇吹やす1
 藻屑と消えしみ魂幾万静もれる海軍墓地を訪う史跡探訪
295 11   宇吹やす1
 姉妹の名羨〈とも〉しと思いし日もありき「キヨノ」「千代」「ユキ」「シズ」「キミ」「一士」
296 12   宇吹やす1
 地球の目集む「ソユーズ」オレンジの炎吐きつつ点となりたり
1991 (平成3)
297 01   宇吹やす1
 殺戮文化の惨を遺跡と晒さんか湾岸戦争誰が生き残る
298 02   宇吹やす1
 早逝姉妹の齢もつぐや古希寿ぐとう子等に誘われ料亭につく
299 03   宇吹やす1
 放ち得ぬ我執埋めたしへだてなく覆い手清し今朝の積雪
300 04   宇吹やす1
 大気汚染も水質汚染も抵えぬ花の悲涙か春を呼ぶ雨
301 05   宇吹やす1
 曲芸に拍手うながす「チンパンジー」手綱は終にほどかれざりき
302 06   宇吹やす1
 湾岸に続く海とも思われず鞆の鯛網絵巻に我も
303  07   宇吹やす1
 自然破壊を憤怒の地霊か「ピナツボ火山」「雲仙」鎮静の気配は見せず
304 08   宇吹やす1
 阿伏兎漢音いつかわの夢叶いたり断崖喘ぎ眺望に佇つ
305 09   宇吹やす1
 垂直石壁六十メートル天を刺す聖堂めける「コンサート会場」
306 10   宇吹やす1
 闇に猛るは自然破壊の怒号とも只つつましく双掌を合〈あわ〉す
307 11   宇吹やす1
 句読点なきままひたに半世紀添い来し夫と自動車〈クルマ〉に揺るる
 308  12   宇吹やす1
 弁慶の闊歩は遠し書写山の幽寂境に心しまり来
 1992  (平成4)
309  01   宇吹やす1
 夢、まぼろしのうつし世しかと知らさるる亡姉の賀状を重たく受くる
 310  02   宇吹やす1
 いかなる宿命〈さだめ〉に生きゆく曾孫か確かなる生命線のやわきに触るる
 311  03  宇吹やす1
 観覧車より見下す人も自動車も「小人の国」めき蟻とうごめく
 312  04  宇吹やす1
 老春を華やぐ一日か青春切符終〈つい〉への旅路もかくあらま欲し
 313  05   宇吹やす1
雨恋し日々もありたりゆったりと籠りて一日歌集読みつぐ
314 06  宇吹やす1
国東のみ仏あまたに和む裡抱きて静かに夜の灯を消す
315 07  宇吹やす1
無様に生きし節太き手に草のアク沁みて匂えり我執の如く
316 08  宇吹やす1
馴れぬ双掌〈て〉に「白粥」と「梅」添えくるる老いたる夫の深き皺じみ
317 09 宇吹やす1
 健やかに孫に從き来し祖谷〈いや〉の旅帰路の車窓に炎ゆる落暉を
お知らせ(忘年会)日時:11月18日(水)11時半~14時まで、場所:ノア(旧玉姫殿)呉中央公園の南 会費:2000円
318 10  チャレンジャーの悲愁も糧と「エンデバー」病める地球へ今メッセージ
お知らせ 宇吹やす様 10月18日安芸津短歌大会入賞、10月25日阿賀短歌大会入賞
 319  11  太古の哀史秘むるや覗く「黒淵」は澄み極まりて底いなき蒼
320 12  一握の土耕して怯えつつ落人生きしや此処「余部」〈あまるべ〉に
 1993  (平成5)
 321  01  あといくばくを相会う初日か稜線の彩雲裂きて今生れ出ずる
あとがき 何となく暗いことの多かった平成四年の鬱を、払いのけるようなホットニュース〈皇太子妃内定〉に沸きたった私達でした。
 322  02  やがて芽吹かん確かさ秘めて裸木は雪を装い朝陽に耀う
 323  03  胃潰瘍、肛門切除、脳梗塞、さまざまの吐息を重たく吐きて
65回呉市短歌大会入選 宇吹やす 無様に生きし節太き手に草のあく染みて匂えり我執の如く
 324  04  「千姫」の悲愁は遠し桜花〈はな〉に泛く〈うく〉白鷺城の人群に入る
 325  05  葉末に耀う朝露ほどの平安に足らいて事なく今日も暮れたり
あとがき ・・・この頃「自分史」なるものが流行っているようですが、グループの月々のこの詠草集は、まさに一人一人の立派な自分史になっていることに思い至ります
326  06  殺戮兵器あまた造りて消されいし大久野島を訪い来ぬ久に
 327  07  この浦に栄えし豪族しのびつつ五色塚古墳の風に吹かるる
328 08  漆黒の画布に咲かせる大輪の花火にどよめき上がる歓声
329 09  光と音のショーに憑かれて今宵又人群に在り呉ポートピア
生くる限りは消えざる思慕か集いたる家族〈うから〉の宴によぎる亡息〈こ〉の姿〈かげ〉 宇吹やす19月19日 阿賀文化祭短歌大会三位
330 10  古代人〈ひと〉も時に賞〈め〉でしかたおやかに「風土記」の丘に揺るる穂すすき
宇吹やす 10月31日竹原文化祭 5位「吐けば互いみに傷つく言葉もさりげなく呑む術つきて仰ぐ星空」
331 11  土の道いまだ残れる山路踏む幸かみしめて「ウオーク」
あとがき 11月14日 呉短歌大会入賞 宇吹やす
332 12  遣唐使船のロマンを恋いて桟橋に乗船切符の配布を待ちぬ
1994 (平成6)
333 01  毛髪刺繡の梵字曼荼羅ほの暗き宝物館の一隅照らす
334 02  雪払う笹の葉ずれも混じじりおり温き寝床に夜の音まさぐる
335 03  傷者いで途絶えいしとう火の祭りふるきままなる左義長組まるる
336 04  すこやかに今年も相会う桜花息子〈こ〉に誘われ「黄金山」に
337 05  国宝指定一号弥勒とう「広隆寺」の暗き堂内に満つる静謐
338 06  飄々と生きて逝きたる姑なりき自在にゆれいる墓地のコスモス
 339  07  小さき手も意外に力みなぎりぬ節太き我が指と握手す
 340  08  地球一周九十分とう「スペースシャトル」人智涯なく地球を縮める
 341  09  毒を持つ蜂さえ深く抱きいる「ギボウシ」の花にみ仏を見る
 342  10  シンドラーに救われ生くる人あまた墓前の長蛇崕てしもあらず
グループ忘年会 11月28日(日)11時から 呉駅前阪急ホテル 会費五千円
343 11  再訪はよも叶うまじ恵那トンネル長きをバスに夫と揺るるる
呉短歌会 11月20日 阿賀公民館
344 12  あまたの史跡巡り足らえる帰路の車窓に耀く波襞〈ひだ〉みつむ  <保野山>
1995 (平成7)
345 01  風に吹かるる如く舞きて陽だまりに草抜く我をめぐる冬蝶
1月24日 安芸津を詠む入選 宇吹やす 妻恋し万葉人にも見せま欲し保野山に泛〈う〉く「万」の炎祭り
346 02 (欠)
347 03  伯耆富士を旬に消しては涌く靄に神の在処を疑わずおり
348 04  沈丁の花毬放つ芳香に抱かれ事なく今日の灯を消す
349 05  地球滅びの警告なりや金玉の無残を飾る福山美術館
350 06  都合よく「殺生肯定」にねじ曲げし「輪廻転生」のオウムの末路
351 07  他人事と日毎聞きいし警笛か夫の傍えに乗る救急車
352 08 羞恥心心つゆなき様に物体と萎えて小さき夫の陰は
353 09  在るし日の夫の仕草に掃き清む庭に箒目しかと立てつつ
354 10  寡婦となりしを励ましくるるや亡夫植えしミニのトマトが日毎熟れゆく
あとがき 10月28日 安芸津短歌会 大会賞・選者賞
動く右手頬しかとさすりたる温み抱きて生きん残生
355 11  亡夫の納骨すませて子等とふり仰ぐ大谷廟上雲一つなし
あとがき 安芸津歌集出版記念大会入賞 宇吹やす
356 12  大島ウォーク程良く疲れ帰路の車に揺れつつ視つむ落陽
1996 (平成8)
357  01  吹きだまる枯葉に似たり寡婦四人冬陽だまりに熱き茶を飲む
 358  02  大水槽を回遊魚群の向等しかつての軍国日本に似たり
359  03  タコ壺のほてりいまだし登り窯冬陽集めてほのかに温し
360  04  太平洋を睨む龍馬の懐手日本の夜明け夢みし炯眼
 361 05  落ちゆきし公卿の悲愁も聴きいしや雁木をなぶる鞆の浦波
 362 06  傷つくる言葉は呑み込む術つきて胸に残滓のよどみてあらん
あとがき 平成8年6月8日 「ビューポートくれ」にて「詠草」30周年記念歌会 宇吹 互選4位、講師選 5位
 363 07  亡夫追憶の「おもかげ」製本こつこつが報われ熱く聴く正信偈
 364 08  待ち人の無き気安さに遠く来て愁流したり黒川温泉
 365 09  去年夫婦〈こぞふたり〉見しもこの位置納涼船船べりたたく潮騒を聴く
 366 10  空と海溶けあい画く弧線のみ望洋はるか足摺岬
 367  11  月と競える様の保野山「万文字」の今くきやかに炎えて泛〈う〉きたり
あとがき 呉短歌大会賞 中国新社賞 宇吹やす「吹きだまる枯葉に似たり寡婦四人冬陽だまりに熱き茶を飲む」
 368 12  孫背負い「弥山」山頂極めたり夫も我も未だ若かり
あとがき 安芸津短歌大会賞(10月26日) 宇吹やす「傷つくる言葉は呑み込む術つきて胸に残滓のよどみてあらん」
1997 (平成9)
369  01  今宵見る夢に顕つかも赤と白社殿を覆う雪景に佇つ
 370  02  姑の孤愁は知らず「娘」〈こ〉と愛すと嫁の決意におくる拍手を
 371  03  オリーブ園の眼下に光る東洋のエーゲ海とう牛窓訪い来
372  04  見ずに逝きたる夫に告げん淡き血をたぎらせ探す「ヘール、ボップ」彗星
 373 05  弘法大師に帰依深かりし「池田首相」の苔むす墓石を覆う「高野槙」
 374 06  国曳きの天女レリーフ遠近にみつつひたゆく神話街道
 375 07  松江城天守への階摩滅して艶めく木目に印するあしあと
 376 08  「マーズ、パスファインダー(無人探査機)」火星をあばき月を踏む人智は永遠なる夢をこわして
あとがき「八月は日本の忌であり広島の忌でもあることをしみじみと感じながら・・・」(松田)
 377 09  「英語覚え帖」古びてケースに寂かなり学び給いし「セキ女」顕ちくる
 378 10  憂きことは、なべて忘れん国体の輪に溶け入りてしなやかに踊る
 379  11  此の出会いもはやあるまじ胸裡〈むなうち〉にしかと灼きたり佐渡大夕焼を
 380 12  生きの証し残し得ぬ身は還りゆく土にせめても花植えおかん
1998 (平成10)
381  01  虚構日本の未来暗示か一條も初光見えぬ重き鈍空
 382  02  無宿人狩られて佐渡の金山へ短命に果てし墓石と遭いぬ
 383  03  新天地夢見し移民の上陸地ペルーの入江に記念碑ひそと
 384  04  夢なりきスキー見学ゴンドラの窓たたく雪も賛歌の如し
 385 05  後〈あと〉いくたびを会える桜花か錦川岸辺に早もただよう花筏
 386 06  シートベルト締めし機上に八時間アラスカあたりか見ゆる流氷
 387 07  アメリカの広さを誇示ともバス十二車線は一直線に首都まで続く
388 08  「ワニ」のしっぽを賞味す記念証明書を受けて異郷の満月仰ぐ
あとがき お知らせ 宇吹やす様は八月二十三日呉市内で交通事故に遭われ、呉国立病院に入信され、九月三日に手術・・・
 389 09 金慾うず巻く世に一服か清涼剤映画館出で仰ぐ流雲
 390 10  空白の輪禍記憶よみがえる目撃証人のあまたに遭いて
あとがき ・・・宇吹様もリハビリに頑張っておられまづ由・・・
 391  11  ギブスの眠り醒めざる脚は他人めき我が意に添わぬ一途さ見する
 392 12  愛の試練と輪禍受け留む窓外を流雲ゆるく象〈かたち〉変えゆく
 あとがき お知らせ 宇吹の快気祝いを兼ねた新年会 日時:1月24日12時、場所:ビューポートくれ、会費:3000円
 1999  (平成11)
 393  01  命得て喘ぎいし留守詫びながら息絶えだえの花に水撒く
 394  02  忘れ得ぬ輪禍も埋めたし再生の一歩と瑞雪にあしあとしかと
 395  03  夢多く紡ぎし日もあり発かれし月に今宵は叢雲かかる
 396  04  「家」恋しベッドの悪夢放たれて花のベールに今抱かるる
 397 05  あい侵すことなく「こぶし」「山桜」互に〈かたみに〉繁り山を彩る
松田先生をお招きして歌会 日時:6月27日12時、場所:ビューポート呉、会費:3500円
 398 06  ホタル住む闇は幽界具現かも光浮遊に広ごる幻想
 399 07  侵されし生き証人の赦されぬ鋭き眼に射らるる「慰安婦」〈ナニム〉の館
 400 08  十九年遠流の悲しみ耐えましし帝への献歌まさぐる火葬場
 401 09  秋の夜の思惟たのしめとや絡みつき「定家かずら」に門扉閉ざさる
402 10  「定型死良かったですね」写真〈うつしえ〉の亡夫〈つま〉に声かけ今日が始まる
 403  11  海田湾一股ぎなり疾走の自動車に息子と相撲談義も
404 12  戦争犠牲者刻む墓標の延々と摩文仁の丘を埋めて鎮もる
2000  (平成12)
 405  01  楯となりしみ霊こもらん沖縄のそよふく風にも蒼き海面も
 406  02  朝光に耀き消ゆる雪羨〈とも〉し終章近し
 407  03  二千年記念と弥山にいどむ我がいずちに荒き息吐く
 408  04  武士(もののふ)の修羅も戦火もみつめしや熊本城の老桜に依る
 409 05  孫巣立ち用なきブランコゆらしみる響きあうごとなずる薫風
 410 06  屈強なる体躯なりしよ骨つぼに小さくおさまり息子〈こ〉の手にのりぬ
 411 07  洞穿つ荒波いずち、うす墨絵さながら隠し壱岐見え初むる
 412 08  未来像見えざる現代〈いま〉か神様と素直に生きし杳き祖たちは
 413 09  敬老の値〈あたい〉あるかな招かるる匹見温泉〈いでゆ〉小さく
 414 10  亡夫と見し場所に今年も声音〈こわね〉似る息子かたえに「山車〈だし〉」待つ我か
 415  11  亡息〈こ〉の部屋に飾られいたる「ビクター犬」思惟なす様に小首を傾〈かし〉ぐ
 416 12  潮待ちに詠まれし杳らき妻恋の歌碑仰ぐ髪をなぶる海風
 2001  (平成13)
417  01  積年の念願叶いたり息子〈こ〉に従きて被爆者涯てし似島を訪う
 418  02  八十路パワー最後と定めし遍路行き歩協十周年のイベントに従〈つ〉く
 419  03  太り過ぎ疎まれ息子の家の住犬に金茶と白のまだら毛「パル」は
 420  04  「くす玉」の紙吹雪を頭〈づ〉に「休山」トンネル開通の雑沓を行く
 421 05  「山陽道、不通」と旅より息〈こ〉の電話互〈かた〉みに無事を確かめ合いぬ
 422 06  日本一高処〈たかど〉とう曳かれ来しまさに豪壮「松山城」は
 423 07  孫を連れいくたび来しか久に訪い憂さを放たん動物園に
 424 08  虚構なる平和に馴れて久に訪う原爆資料館の現実〈うつつ〉に泣きぬ
 425 09  聖戦とたたき込まれしは杳かなり無智なりし悔恨癒ゆる日のなし
 426 10  虚構なる平和謳歌のたまゆらか碧空はるかの硝煙匂う
 427  11  我に似つかぬ「オペラ」鑑賞の季を得たり孫の迎いを刻長く待つ
 428 12  再訪の上海市街を縦横にくまなく走る「トロリーバス」は
2002  (平成14)
 01
 02
 03
 04
05
 434 06  輪廻転生の亡夫なるかも手に止まるホタルをそっと双掌に囲む
07
08
09
10
 439  11  賞あまた消ゆ なきあしあと数知れずグループ我らの光でありし
12
2003  (平成15)
441  01  還りゆく土に託しし苗あまた皺む双掌に囲みてしばし
 02
 03
 04
445 05  定めなき再開を約し振り返る野呂山頂埋むる人群
 446 06  魂の浮遊とも見ゆ漆黒の宙を飛び交う蛍火あまた
07
08
09
450 10  空蝉を憩わせ揺るる「われもこう」一枝を供花となして辞したり
 11
 452 12  逆縁の息〈こ〉の二十五回忌の通知受く消し得ぬ追憶やさしくなぜて
2004  (平成16)
 453  01  暁暗の高速道を突走る今し生まれたる初光とあう
 454  02  生きるとは「考えること」と聴きいたり一合の米今日もとぎおり
あとがき ・・・宇吹様ですが来月から小川様と交替・・・
 455  03  病院遍歴最后と縋る〈すがる〉国立病院も自然治癒しか「クスリ」無きとう
あとがき ・・・今月から宇吹哲夫様がご参加・・・
 456  04  独り居の日々を紡ぎて早八年皺む双掌を陽だまりなずる
 457 05  弧を生くる虚しさ知らず逝きし夫〈つま〉羡しみ仰ぐ淡き半月
458 06  未だ見ぬ幽界ふとも拡ごりぬ優雅に飛び交う蛍火みつむ
456 07  幽界は無限界かも幾光年逝く人抱擁る漆黒想う
 460 08  待ち侘し婚整いて招かるる微動だにせず誓詞読む孫
 461 09  新聞読める幸いいまだあり嬉しき事を指折りて見る
 462 10  被爆者の呻吟かもともこの炎暑力しぼりてく蝉しぐれ
 463  11  草抜かぬ荒放題の畑に佇ち土の温もりそっと確かむ
 464 12  曳き呉るる息子〈こ〉の手我よりも温かししかと右られ墓参叶いぬ
2005  (平成17)
 465  01  宇吹やす1
忌憚なく子育語り合いし仲空虚〈うつろ〉な瞳に瞬をたじろぐ
 宇吹哲夫13
466 02 宇吹やす1
宇吹哲夫12
 467 03  宇吹やす9-10
 宇吹哲夫11
 468  04  宇吹やす11
 宇吹哲夫11-12
 469  05   宇吹やす9-10
 宇吹哲夫11
 470  06  宇吹やす1
 やがて訪う終への誘い感じつつ乗りたき雲の西ゆくを追う
 宇吹哲夫11
  471  07   宇吹やす1
 一度はとの念願叶いぬ息子(こ)に従きて料亭「音戸」の客となりたり
宇吹哲夫12
 472  11  松田弘江先生追悼号<10月25日死亡>
 宇吹やす9 追悼歌
宇吹哲夫11
2006 (平成18)
 473  02  宇吹やす7
かくまでに生命給わると想わざり身内それぞれ早く逝きしを
宇吹哲夫11
 474  03  宇吹やす1
死期近き双掌に我がほほ囲みたる亡夫の温み忘れぬ今も
  宇吹哲夫9
 475  04  宇吹やす1
孫達の生誕記念樹それぞれに大樹となりて舞う桜花吹雪
 宇吹哲夫9
 476  05   宇吹やす1
「万里の長城」亡父と登りし追憶を眠れぬ夜はまさぐりて醒〈おり〉む
宇吹哲夫13
477 (今月号より投稿者の名前を50音順)
 477  07  宇吹やす2
在りし日に夫の作りし「ブランコ」を小さく漕ぎて仰ぐ流雲
 478  08 宇吹やす2
極楽は此の世に在りと思う杳かとなりて仰ぐ流雲
479 09 宇吹やす2
望む旅何処なりとう誘う息子思案の涯て尾瀬沼選びぬ
480 10 宇吹ヤス2
我が頬をなでつつ逝きし夫の掌の温みは今もしかと覚ほゆ
481 11
482 12  宇吹ヤス2
霜白きを払いてネギを抜く一人朝餉のお汁の具にと
2007 (平成19)
 483  01  宇吹ヤス2
物忘れしげき身叱る人もなし見守る亡夫の写真仰ぐ
484  02   宇吹ヤス2
幽界もかかる闇かもねつかれぬ夜に起き出で仰ぐ半月
 485  03  宇吹ヤス2
呆初む身にも僅かの自負ありて気づかぬ振りに返す笑顔を
 486  04  宇吹ヤス2
 近郷にては名立たる吉浦蟹祭り見納めなるや友と訪い来ぬ
487  05  宇吹ヤス2
一人居の空しさ知らず逝きし夫仰ぐ写真笑まうたまゆら
 488  06  宇吹ヤス1
寝つかれぬ今宵の夢路に杳かなる尾瀬の旅路の水ばしょう顕つ
 489  07  宇吹ヤス2
若き日の雑魚寝山小屋尾瀬の旅鮮かに顕つ今宵の夢に
 490  08  宇吹ヤス2
梅雨明宣言のテレビ画面に裡はずむ晴天予報に洗濯急ぐ
 491  09  宇吹ヤス2
ラクダの背に引き上げ呉れし在りし日の亡夫の温み眠れぬ真夜は
 492  10  宇吹ヤス2
よろめける身を息子にひかれ訪い来たる歌舞伎の豪華に酔いぬ一瞬
493  11  宇吹ヤス2
我がほおをさすりつつ逝きし夫の掌の温み未だし裡ふかくあり
 494  12  宇吹ヤス1
北満六年の兵より夫の還りし日蘇る夢にて在らじしかと抱き合いし
宇吹哲夫2
灰ケ峰野呂休山仏通寺紅葉の盛りを母と訪いたり
 2008  (平成20)
 495  01   宇吹ヤス2
小学校時代の友との出会いにたじろぎぬ老醜晒す施設の前に
若かりし杳かなる日はいずちにや言葉は無くてただ抱き合う
 がんばりましょう給わる生命大切に又の出会いを約す一刻
 496  02  宇吹ヤス2
万里の長城日本首長も此処までとう遥かなる日の追憶に醒む
弱りたる脚きたえんと続きいる万歩の日課を刻に今日も終えたり
夕方のいつもの歩行身に定む日課終えたる脚をなぜおり
497 03 宇吹ヤス2
寝つかれぬ伏床起き出で中天に輝く星座仰ぎて冷ゆる
同期の友等死への旅路ちらほらと人事ならず仰ぐ三ケ月
宇吹哲夫3
 498  04  宇吹哲夫2
499 05 宇吹哲夫2
最高の瞬の桜をみせたくて母と連れ合う灰ケ峰の谷
500 06
501 07 宇吹哲夫1
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504 10 宇吹哲夫2
 505  12  宇吹哲夫2
2009  (平成21)
 506  01  宇吹哲夫2
母寝込み一緒せし旅出来なくて吾はいらいら顔くらくなる
507 03 宇吹哲夫2
508 04 宇吹哲夫2
509 05 宇吹哲夫2
喜びを共にする母伏しており桜見物気持遠のく
510 06  宇吹哲夫2
病む母の意を汲み取れぬもどかしさ裡に空洞拡がりて来ぬ
 511 07  宇吹哲夫2
 512  08   宇吹哲夫2
513 09  宇吹哲夫2
 514  10  宇吹哲夫2 <表紙>10月14日 鉄道記念日
 515  11  宇吹哲夫2
2010  (平成22)
516 01 宇吹哲夫2
517 02 宇吹哲夫2
 518  03  宇吹哲夫2
 519  04  宇吹哲夫1
520 05 宇吹哲夫2
521  06  宇吹哲夫2
 522   07   宇吹哲夫1
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 524  10  宇吹哲夫2
525 11 終刊号
西岡喜美子「終刊に寄せて」
「作歌を生涯の友として日記代りにとこころからお勧め申します」」