核と放射線の現代史―開発・被ばく・抵抗

『核と放射線の現代史―開発・被ばく・抵抗』(若尾祐司・木戸衛一編、昭和堂、20210311)

内容

まえがき
第一章 世界大戦期ドイツにおける戦場医学と放射線防護の発展(北村陽子)
はじめに
1X線の発見と医学への応用…………
2戦場医学でのX線の使用………………
3放射線防護の動き
4ドイツにおける放射線防護に関する規定
おわりに
第二章 ABCCの被爆者調査-治療と調査をめぐる攻防-(中尾麻伊香)
はじめに
1初期のABCC
2ABCC批判と非治療方針
3被爆者医療とABCC
おわりに
第三章 隠匿されたビキニ水爆実験被ばく者(高橋博子)
1マグロ調査打ち切りに対する米国務省・米大使館・米原子力委員会の関与
2隠匿された日米交渉関連文書
3日米政府間での政治決着
おわりに
第四章 ”乗り越えられなかった壁”一九五〇年代末~六〇年代初頭のソ連における放射線影響研究―(市川浩)
はじめに
1ソ連における放射線影響研究初期の展開
2放射線影響研究の抜本的強化をめざして
3西側の放射性影響研究との邂逅
むすび
第五章 フランスにおける初期の核燃料サイクルの歴史-使用済核燃料再生処理と高速増殖炉の蜜月時代-(小島智恵子)
はじめに
1フランスのウラン資源開発の歴史
2軍事目的のための再処理
3民生目的のための再処理
4高速増殖炉開発
むすび
第六章 英国の「周縁」オークニー諸島におけるウラン採掘抵抗運動―ローカリズムと越境的連携の模索と葛藤
はじめに
1ウラン探鉱計画と抵抗運動の開始
2ノー・ウラニウム運動の展開-連携と非連携の迷い
3EIP報告とスコットランド省の判断
4ローカリズムと環境をめぐる自決権
5ウラン採掘問題の長い影
おわりに
補論1 チェルノブイリ原発事故後のドイツとフィンランド(佐藤温子)
はじめに
1ドイツ
2フィンランド
おわりに
第七章 マンハッタン計画国立歴史公園における展示の現状―ハンフォード・サイト周辺地域の歴史を中心に―(川口悠子)
はじめに
1二つの戦争とはハンフオード・サイトーマンハッタン計画から冷戦まで
2「再び変貌する大地」-ハンフオード・サイトの汚染と除染 3展示の背景-ハンフオード・サイト周辺地域の歴史から
おわりに
第8章トリウム熔融塩炉開発の歴史と現在(和田喜彦)
はじめに
1アルビンーワインバーグのトリウム熔融塩炉川発の足跡
2アルビンーワインバーグの業績の再発見
3日本のトリウム熔融塩炉の原発の歴史と現在
4レアアース・スズ製錬の副産物としてのトリウム232
5トリウム熔融塩炉の評価
おわりに
第9章日本における核燃料物質「加工」事業の歴史的展開―東海村・住友金属鉱山・JCOの臨界事故(山本昭宏)
はじめに
1東海村の原子力開発とJCOの前史
2JCOの誕生から臨界事故まで
3JCO批判と低線量被爆ばくのリスク評価
おわりに
第10章「低線量長期被ばく都市・フクシマ」の十年-住民として研究者として暮らす-(後藤宮代)
はじめに―2020年3月、新型コロナウイルスで甦るる、放射能・「見えない恐怖」
1福島に原発10基が建設された背景
2「フクシマの声」はどのように形成されてきたのか
3フクシマの運動の特徴
4バック・フラッシュ
5放射性汚染水の海洋放出
おわりに
第11章 福島原発事故後の日本で起こったこと、これから世界で起こること―放射線の健康影響をめぐる科学論争と政治-(藤岡毅)
はじめに
120ミリシーベルト避難解除基準成立の経緯とその問題性
2「100ミリシーベルト以下安全論」は科学ではなく被害者切り捨てのイデオロギーである
3「科学の不確実性」を盾に被ばくの健康リスクを隠す専門家の論理の批判
4福島県の小児甲状腺がん多発の原因をめぐる論争
5結びに代えて―科学に基づく原発事故被害者のための政治を望みたい
補論2
住民の被ばく線量データを扱った論文の撤回(山内知也)
第12章 フクシマ核惨事とオーストリアの反原子力政治(若尾祐司)
はじめに
121世紀への世転転換期におけるオーストリアの政治と核問題
2フクシマ核惨事の衝撃と事実認識
3反原子力の戦略
4欧州脱原発政策の障害
5核兵器禁止条約の成立
おわりに
第13章気候変動の否認と原発ルネサンスの夢-ドイツ極右のエネルギー・プロパガンダー(木戸衛一)
はじめに―「フライデイズ・フォー・フュ―チャー」のインパクト―
1ドイツ人の環境・気候意識
2「気候ヒステリー」への反発
3AfDによる気候変動の否認
4原発回帰の追求
5「世界原子力遺産」無害化の試み
6「無知の傲慢」の拠り所
おわりに
補論3ドイツにおける医師の平和運動(竹本真希子)
はじめに
1ドイツの医師と「平和」
2反核運動の展開と核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部
おわりに
座談会 核とコロナ
参加者
和田喜彦
高橋博子
山本昭宏司会
木戸衛一
あとがき
索引