広島爆心都市からあいだの都市へ 「ジェンダー×植民地主義交差点としてのヒロシマ」連続講座論考集

『広島爆心都市からあいだの都市へ 「ジェンダー×植民地主義交差点としてのヒロシマ」連続講座論考集』(高雄きくえ編、インパクト出版会、20221125)

内容

1 旧陸軍被服支廠とヒロシマの記憶-何のために残すのか…23
小田原のどか 爆心地の彫刻 広島から得た視点を敷衍する…24
批評の必要…25
彫刻の恥ずかしさ…26
語り続けること…29
おわりに:まだ見ぬ誰かへ…32
森田裕美 旧陸軍被服支廠と広島の記憶…34
はじめに…34
軍都廣島を伝える「無言の証人」…36
詩画人・四國五郎と被服支廠…37
被爆…38
敗戦後の活用…40
存廃を巡る動き…41
そして私たちは…43
切明千枝子 加害と被害が刻印された全四棟が保存されることを強く望みます…44
2 在日朝鮮人女性史・生活史から学ぶ…55
宗恵媛 在日朝鮮人一世女性を読む-文学とエゴドキュメントと、そのあいだ…56
はじめに一世女性はどこにいるのか…56
在日女性研究には学問的価値がない?…58
文字資料の中で女性たちと出会う…60
一世女性たちはどのように描かれてきたか…61
「エゴドキュメント」と「文学」とその「あいだ」…64
女性たちの作品を読む…67
一世女性たちと識字教育…67
文字世界の中の一世女性たち…69
むすびにかえて…78
3 加納実紀代が語る、加納実紀代を語る…83
加納実紀代 『平和』表象としての鳩と折鶴 二〇一八年一一月一七日・『〈銃後史〉を歩く』出版記念会講演…84
表象研究の意義…84
平和とは何か…87
「平和」表象としての鳩…89
「平和」表象としての折鶴…90
〈無辜なる被害者〉の構築…90
世界に広がる禎子と折鶴…93
「右」に回収される「平和」表象…95
「右」に回収される折鶴…96
「大東亜戦争」肯定と千羽鶴…98
「表象」の持つ多面性…99
さいごに…101
池川玲子 未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」…103
極私的交差路で辿る加納史学…103
加納実紀代さんと若桑みどりさん…103
戦争とジェンダー表象研究会…105
立つ瀬がない…107
3・11…107
「立つ瀬」を築くために-折鶴と鳩…109
二〇一八年『「銃後史」をあるく』…110
未完の集大成…112
「『平和』表象としての鳩と折鶴」の挑戦…112
ドラマへの意欲…113
未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」を考える…114
宿題…114
「かっちゃんとミチコちゃん」…116
まとめにかえて…119
高雄きくえ 広島で「加納実紀代」を継承するということ…121
はじめに…121
『女たちの〈銃後〉』序章のインパクト…122
被爆体験を女の視点で考えるシンポジウム「女がヒロシマを語る」…126
原爆資料館で「銃後を支える力となって 女性と戦争」展…127
被爆者は加害者なのか-「加害と被害の二重性」をめぐって…130
広島で「加納実紀代」を継承するとは…132
平井和子 「被害」と「加害」の底深い悲惨さの自覚-「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と…135
はじめに-「被害」と「加害」の二重性を引き受けつづけて…135
原点にあるもの…135
加納さんとのご縁のなかで…138
“銃後の女”は加害者か?…140
「侵略された女」と「銃後の女」をつなぐフェミニズム…143
「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と…145
朴裕河さんの本をめぐって…145
日本兵と「慰安婦」の恋愛関係-消去されたノイズ…148
「平和の少女像」をめぐって-「被害」と「加害」の二重構造を見据えよ…149
『帝国の母』…151
まとめにかえて…152
4 『パーク・シティ』公園都市広島を語る…155
笹岡啓子 「なにかが起こったあとの場所」への眼(カメラ)-〈暗さ〉は抵抗…156
慣れ親しんだ街への違和感…156
ここは「広島に落ちた(その)原爆が落ちたみたいだ」…160
〈広島-東京-東北〉の往還から…162
公園化されていく三陸地域…167
柿木伸之 〈公園都市〉を視る写真の批評性-笹岡啓子『PARK CITY』への応答として…171
暴力が交差する場としての広島に向き合う…171
ヒロシマのアウラを剥ぎ取る写真…173
想起の媒体としての写真…176
公園化とそれを突き抜けるもの…180
5 広島の在日朝鮮人史を掘り起こすために…185
権鉉基 消える朝鮮人史への危機感から資料室づくりへ…186
「君はだれか?」という問いに…186
広島在日朝鮮人史の現在…188
資料室が新しい動きにつながるように…190
安錦珠 船越町に生きる在日韓国・朝鮮人-いつ・なぜ朝鮮人集落が形成され、どのように生きてきたか…193
はじめに…193
広島の韓国・朝鮮人…195
船越町の朝鮮人集落…197
船越町はどんな所?…197
船越町民の生活…201
朝鮮人の「船越」への流入…207
船越町の在日韓国・朝鮮人の生活…214
朝鮮人集落と日本人側の朝鮮人集落に対するイメージ…215
仕事…217
抵抗…218
仕事を失って帰国…220
定住志向と仕事の変貌…222
花都部落の宅地購入…223
地域の変化…224
朝鮮学校…226
初・中・高級学校…226
電機高校と朝鮮学校の生徒同士の喧嘩、そして教員同士の交流…228
教育内容の変化と朝鮮学校の課題…231
廉和善先生と教員免許取得…231
むすび…233
6 セクシャル・マイノリティとフェミニズムの対話…237
河口和也 家族から疎外される/を求める性的マイノリティ…238
「反家族」から出発…238
「身近な人が同性愛だった場合」の反応…240
パートナーシップ制度という動き…242
広島の場合…244
パートナーシップ制度と同性婚…246
性自認と同性婚…247
私が同性婚を容認する理由…249
堀江有里 〈反婚〉の可能性-婚姻不平等の現実と、制度がはらむ問題を同時に考えることは不可能なのか?…251
はじめに-問題の所在…251
自己紹介…252
問題関心…253
不平等の解消と〈反婚〉の可能性…254
〈分断〉をみつめる…257
性的マイノリティとフェミニズムのあいだ?…257
「同性婚」の(不)可能性…261
キリスト教の立場から-内在的な宗教批判の必要…263
それでも、なお、〈反婚〉を-分断を架橋するために…266
高雄きくえ 選択的夫婦別姓が法制化すると日本の家父長制・婚姻制度の何がひらかれるのか-フェミニズム・ジェンダー/植民主義という視点から考える…270
はじめに…270
二つのこだわり…272
自著『わたしの名前』の反響…273
わたしの「選択的夫婦別姓法制化」への共感と違和感…276
おわりに-戸籍につながる婚姻/家父長制・植民地支配を問い、ひらくために…281
7 〈この世界の片隅に〉現象を読み解くためのレッスン…283
植松青児 三つのコンテクスト(軍部・ジェンダー・植民地主義)から読み解く…284
すずの故郷・江波の顔…285
祖父と朝鮮人強制動員…287
日本軍「慰安婦」と地つづきの白木リン…288
ノスタルジーと歴史修正主義に抗する批判を…290
森亜紀子 切り落とされてきた場所・出来事から考える-呉・沖縄・南洋群島を糸口に…294
私の視点-沖縄・南洋群島を経由して故郷・呉に向きあう…294
『この世界の片隅に』はなぜ多くの人の心を掴んだのか…297
-描かれたことと切り落とされたこと-
「戦災地」としての呉を描く…297
戦時下の暮らしを詳細に再現した…298
すずの「呉市民化」の過程を丁寧に描いた…301
戦争への強い関心の一方で不可視化されてきた植民地主義…303
-南洋群島は「楽園」だった?-
「楽園」と名付ける植民者…304
沖縄エリート出身者・徳村夫婦の場合…306
チャモロ女性と光子さんのあいだ…308
沖縄人エリート層の帝国意識の内面化…310
消しさられた他者とその傷跡…314
おわりに-広島で培われてきた議論をさらに開くには-…315
川口隆行 〈この世界の片隅に〉現象をどう考えるか-植松報告、森報告を受けて…317
〈この世界の片隅に〉現象の前史について…318
『この世界の片隅に』にある朝鮮人イメージから何を考えるか?-植松報告を受けて…320
こうの史代の「普遍」へのこだわりをどう考えるべきか?-森報告を受けて…324
「復興」あるいは「レジリエンス」という言葉の浸透…326
おわりに…328
8 広島で〈加害性〉を語るということ-植民地支配/戦争責任/戦後責任と被爆都市のあいだ…329
阿部小涼 爆心都市からあいだの都市へ-植民地主義と戦争の責任という経路…330
はじめに…330
広島とあいだ…331
最近の報道から…334
沖縄の米軍基地をめぐる報道…334
被爆者をめぐる報道…338
コミュニケーションが寸断する戦争の責任という経路…339
日米首脳電話会談…339
核禁条約をめぐる平行線の同じ俎上…340
人々による別の物語の探求…343
被爆者からグローバル・ヒバクシャへ…345
軍事主義空間の忘却に抗う…346
空爆への問いと人種主義…349
米軍基地と核と女性解放…352
おわりに…357
河内美穂 植民地主義の起点・運動の継承-私自身のここ数年の最大の課題を提言として…359
私から始まる…359
「満州国」と中国残留邦人…361
「満州国」と中国朝鮮族…363
「満州国」とモンゴル系諸民族…364
加害との向き合い方…366
上野英信『天皇陛下萬歳』に見る加害との向き合い方…367
運動の継承…368
植民地主義の起点…370
アイヌについて 植民地化の原型…372
先住権を求める闘い…373
田浪亜央江 広島と中東の〈加害・被害〉と植民地主義-「復興」をめぐる齟齬から見えるもの…376
広島の「世界認識」…376
植民地経験に続く中東の現在…378
「アウシュビッツ」と広島…380
パレスチナから広島を問う…384
道面雅量 ヒロシマからは少し離れて…387
「呉」という地から…387
チョウ・ムンサンの遺書…389
美徳景さんとの出会い…390
「不戦兵士」小島清文…391
自由の価値と多様性…392
おわりに…393
中谷いずみ 未来を語ること-井上ひさし『父と暮せば』…395
はじめに…395
『父と暮せば』の時間…396
記憶の回復/整序と再生産的未来…399
単線的時間の(不)可能性-大田洋子『夕凪の街と人と』を参照軸として…404
おわりに…411