小渕内閣総理大臣記者会見録
広島市
平成10年8月6日(木)
【司会】 それでは、ただいまから小渕内閣総理大臣の記者会見を始めさせていただきます。
【質問】 早速ですけれども、国が広島市に計画している原爆死没者追悼平和祈念館建設についてお伺いしたいと思います。今年3月に衆議院の厚生委員会で小泉前厚生大臣が建設計画の見直しともとれる発言をなさいました。総理の方針を確認させていただきたいと思います。併わせて、予定どおりもし建設推進ならば今後の建設スケジュールと建設理念もお聞かせください。お願いいたします。
【小渕総理大臣】 まず、皆さん御苦労様でございます。若干、遅参をいたしましてお許しいただきたいと思います。
まず、ただいまのお尋ねでございますが、原爆死没者追悼平和祈念館につきましては被爆者援護法や同法制時の衆議院厚生委員会の附帯決議におきまして早期に設置を図るべきものとされておりまして、これを受けまして検討会を設けておりまして、開設準備のための検討を鋭意進めていると聞いております。この祈念館につきましては、国が原爆死没者の犠牲を明記し、かつ恒久の平和を祈念するための施設を設置することに意義があると考えております。
また、検討会におきましてはこの既存の施設と重複しない形での整理も可能との検討が進められておりまして、9月にも報告をまとめられるものと聞いております。その報告を受けまして、建設に向けて具体的な作業に入ってまいりたいと考えておりますが、私といたしましてもせっかく今、申し上げましたように国会の決議にも委員会の決議にもございますので、既存のこの施設との関係も十分検討していただきまして、ともにこの死没者のための慰霊も含めまして意義あるものが建設されることになれば望ましいと思っておりますが、いずれにしても検討会で進めておることでございますので、これ以上申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、気持ちとしてはそこにあると御理解いただきたいと思います。
【質問】 分かりました。続いて、臨界前核実験について広島では以前からCTBTの精神に反すると明確に抗議しています。それで今後なんですが、アメリカを始め核保有国各国の核軍縮と、このほど核実験を強行したインド、パキスタン、両国間の関係改善について総理はどうイニシアチブをとるおつもりなのか、お聞かせください。
【小渕総理大臣】 我が国は従来より核保有国に対し一層の核軍縮を推進することを求めてきておるところでございまして、今後とも米露両国に対して第二次戦略兵器削減条約、いわゆるSTARTⅡが今ロシアにおきまして、国会で批准が非常に停滞しておるということでございますので、私もプリマコフ外務大臣と会う度にこのことを申し上げてきておりますが、Ⅱが終わったらⅢの問題もあるわけですから、早期にこれが交渉開始を粘り強く米露、すなわち5大国において最も核保有国、この2つの国が徹底的に核を削減しなければ究極の核はなくなるという方向にならないわけですから、それを現実の問題としては是非両国に強く求めていきたいというふうに思っております。米露以外の核兵器保有国に対しましても、現在の核軍縮努力を一層強化していくように求めていくところでございます。
なお、未臨界高性能爆薬実験、包括的核実験禁止条約、CTBTにおきまして禁止されていないというのが国際的な認識であると考えておりまして、現時点では有効な検証手段が存在しない等の事情もあり、将来の課題として検討されるべきものと考えております。
いずれにいたしましても外務大臣時代、いわゆる印パの核実験に対して、日本政府は唯一の被爆国としての立場から両国に強くその中止を求めてきたところでありますが、残念ながらこれを強行してしまったということでありまして、その後ジュネーブの軍縮会議でもありましたし、G5での会合もありました。その後G8、ロンドンでの会議に私自身も出席をしまして強く求めましたが、私としてはいわゆるG8の中には核保有国があるわけでありまして、それと同時に核を保有をすればできたと思われる国、あるいはその開発を途中で中止した国について、その連携をできる限りとりたいと私が念願をしまして、G8につきましてもそうした国々の御参加を実は求めて会議が開かれたわけでございます。
その後、私もその国の一か国と思われるブラジルにこの間、日本の移民90周年に行った折にカルドール大統領に強くこのことを申し上げまして、できればアルゼンチン、それから今、言ったブラジル、南ア等々の国と連携を密にしていきたいというふうに考えておりますが、今日の新聞によればでございますけれども、あの永世中立国たるスイスにおきましても、核保有のための検討がなされておったやに聞いておりますが、これはもう中止されたと、正確な報道でないから私も承知しませんが、こういう国々と連携をとりながら現実に保有する5か国プラス2か国に対して、きちんとこれから核保有について人類のために少なくしていく努力を、確実になるように、日本の立場をより主張していきたいというふうに考えております。
【質問】 分かりました。続きまして、今日の式典のあいさつでも少し触れられたかと思うんですが、国際フォーラムの時期と内容、あとは出席候補者について構想を伺わせていただきたいと思います。 合わせて、2000年に日本で予定されておりますサミットの誘致について、広島も立候補しておるんですが、各地で地元を挙げた運動が始まっております。開催地選考についてのお考えを伺わせてください。
【小渕総理大臣】 インド、パキスタンの核実験を受けまして不拡散体制を堅持強化し、世界的な核軍縮を一層促進することについて検討を行うために日本国際問題研究所及び広島平和研究所の共催によりまして核不拡散、核軍縮に関する緊急行動会議を開催することとし、現在8月30日、31日に第1回の会合を東京で行うべく準備中でございます。内外の著名な有識者20名程度の参加を得て、この1年間に4回程度の会合を行いまして、国際社会の提言をまとめることを目的といたしておりますが、こうした類似ではありませんがいろいろな目的を持っての会合は豪州等で開かれた経緯もあります。
それで、このフォーラムにつきましては私がG8のときに我が国の主張ということで、こうした行動会議を開きたいという提案をいたしましたところ、参加国がこぞって賛同の意を表したわけでございます。そういった意味では、日本のイニチアチブの一つだというふうに私は認識をしておりますし、こうした地道ではありますけれども行動会議を通じて世界の有識者の皆さんに核廃絶、核軍縮に向けて、こうした努力の積み上げということは非常に地味でありますが効果を発揮するものだというふうに考えておりますし、今、申し上げましたように広島に平和研究所が設立をされました。長い間、私も国連と日本政府という立場でありますけれども、同一の考えを持ちまして行動してきた明石さんが所長に就任をされたということを大変心強く実は思っておるわけでございまして、是非この行動会議が意義ある会議として今後継続をしていっていただきたいと思っております。
時期によりましては、また当広島においての開催等も念頭に置いてしかるべきではないかと私自身は考えております。
それから、第2点の2000年のサミット、これにつきましては一時ロシアがこの年にサミットを開催したいという希望が申し述べられておりまして、実は今年のサミットにおきましてロシア側からそういう御希望が我が国にも伝えられておるところでございますが、いずれにしてもこれは開催国のイギリスがお預かりしておりまして、現時点においては恐らくこのサミットの開催地の変更ということはあり得ないのではないか。日本側としては、もしその他のサミット国が御賛成されれば、日本としては新しく加盟したロシアのお立場というものも決してないがしろにするつもりはないと思っておりましたが、ほかの国々も順序を変えることは望ましくないのではないかという考え方に傾いておるということでございますので、最終的にはイギリスのクック外相にお話申し上げておりますが、対応としてはそういう形であれば2000年には我が国ということになると思います。
そこで、その開催地につきましてですが、私は国会でも申し上げているように、過去3回実は東京で開いております。それで、それぞれのサミット国も実は3回同一でやったところはありますけれども、4回目からはその他の地区に移っているんです。それで、日本はもちろん首都東京が最も便利と言えば便利なのかもしれませんが、この機会に日本全国各地区で御希望があり、また国民の皆さんもそうした形を望まれると言うのであれば、いわゆる地方で開催することも望ましいと私は国会でも答弁しております。
でありますが、しからばいかなる地域かということでございますが、広島も希望されておると聞いておりますが、ほかの地区も熱心に熱心に希望しておりますので、今の段階ではいずれとも判断しておりませんが、あらゆる条件ができる限り整っておる地域に最終的には決定をしていくと思っておりますが、これまた御案内かと思いますけれども、従来のサミット、首脳会談と、その前に開かれる外相、大蔵大臣の会合がロンドンから実は2段構えになっております。したがって、2000年の東京におきましてはどのような方式になるか、これも一つの大きなポイントだろうと思っております。99年のドイツにおきまして、従来のような形で同一の地域において2つの会合が行われるか、今年開かれたようにロンドンで外相、蔵相会議をして、その後、首脳会談は静かなるバーミンガムで開くという初めてのケースもございますので、そうしたことを勘案いたしまして、我が国におきましても1か所で行い得るのか、あるいはそうした時間差を置いての会合になるか。これまたこれからの判断があるかと思いますが、現時点におきましてはいずれとも決定をしておらないということでございます。
【質問】 まず最初の質問です。不良債権処理の関連法案をめぐってですが、野党側には政府自民党は経営者の責任などが不明確だとして修正を求める動きがあります。総理は政策ごとの野党との連携にこれまで積極的なお考えを示してきたんですが、これらの法案の扱いについてどのような態度で臨むのか、よろしくお願いします。
【小渕総理大臣】
【質問】 続いてですが、政府自民党は所得課税の最高税率の引下げと、ほかの所得階層で税額を一定の割合で減らす定率方式との組み会わせで7兆円規模の減税を行う方向で調整中ですが、具体的な減税の方式や規模について総理としてお考えをお聞きしたいと思います。
【小渕総理大臣】
【質問】 最後の質問ですが、減税などの財源の確保のために総理は財政構造改革法の凍結を主張してきましたが、凍結の期間はどの期間が適当か。あるいはまた、凍結のための法案は通常国会での提出を考えているのか、それとも今の臨時国会か。併せてお伺いしたいと思います。
【小渕総理大臣】